東北大学大学院工学研究科教授の原信義氏と東北特殊鋼は、固体高分子形燃料電池を健全に作動させるために重要な、純水の流れを制御する電磁弁鉄心用の、快削高耐食性電磁ステンレス鋼を共同開発した。
東北特殊鋼は2001 年に、東北大学、産業技術総合研究所東北センター、及び大同特殊鋼と共同のNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)補助事業で、鉛フリー快削鋼の開発を目的として、チタン炭硫化物(TiCS)分散型快削鋼を開発している。その際、元々鉛含有鋼ではないK-M38 についてもTiCS 分散型のK-M38CS を試作したが、同鋼種の快削化ニーズがまだ顕著ではなく、実用化開発には進まなかった。
その後の約10 年間にK-M38 の固体高分子形燃料電池部品用材料としての普及が進み、切削コストを下げたいとのメーカーの要望が強くなってきたことから、金属材料中の硫化物の電
気化学的性質に詳しい東北大学が東北特殊鋼から委託を受け、固体高分子形燃料電池を模擬した水環境(80℃、超純水)でのK-M38CS の耐食性と成分元素の溶出挙動について評価した。
その結果、K-M38CS はチタン炭硫化物が分散していても、K-M38 と同等の耐食性を有し、
代替鋼として使用可能であることが確認された。これにより、従来快削材料がなかった高耐食性電磁ステンレス鋼製の、水用電磁弁部品の加工コストが低減され、燃料電池の普及促進に貢献するものと期待される。
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