東芝欧州研究所ケンブリッジ研究所は,独自の高速光子検出技術を適用し,複数の送信器と1台の受信器を接続したシステム(量子アクセスネットワーク)を用いて,世界で初めて量子暗号鍵配信の実験・検証を行なうことに成功した。
これまで量子暗号鍵配信技術の研究開発は,1台の送信器と1台の受信器を接続したシステムで行なってきた。しかし,このシステムでは,ユーザが増えるたびに送信器と受信器が一対一に接続された通信路が増加する。そのため,複数のユーザと通信するセンター側で,量子暗号鍵配信用の光ファイバの引き込みや受信器を置くスペースがユーザの数だけ必要になるなど,量子暗号鍵配信システムの普及の課題となる。
そこで東芝は,受信器1台で複数の送信器と接続することができる量子アクセスネットワーク技術の開発に取り組み,実験・検証を行なった。具体的には,1ns間隔で光子を検出できる同社独自の技術により,1台の受信器で複数のユーザから送信された光子を検出することができるようになった。
また,温度変化による光ファイバの長さの変化を送信器側でアクティブに補正する手法も実装し,安定で連続的な通信ができるようになった。今回は,送信器2台を光スプリッタにつなぎ,1本の光ファイバで受信器1台と通信をした。その結果,毎秒250キロビットを超える量子暗号鍵送信や,12時間にわたる安定動作,最大64ユーザまでの同時接続可能性を示した。
この量子アクセスネットワーク技術により,複数のユーザから信号を集め,一本の光ファイバでセンターへ送るネットワークを,標準的な光通信部品で構成することができるようになる。これは,量子暗号鍵配信技術を使ったシステムを導入したいユーザのスペースや設置の手間,コストなどの低減ニーズに応えることにつながるもの。
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