JAMSTECほか、海底から噴出する熱水を利用した燃料電池型発電に成功

海洋研究開発機構(JAMSTEC)海底資源研究プロジェクト研究員の山本正浩氏と理化学研究所・環境資源科学研究センターチームリーダーの中村龍平氏らの共同グループは、沖縄トラフに人工的に作られた深海底熱水噴出孔(人工熱水噴出孔)において熱水と周辺海水の電気化学的な現場測定を行なった。この結果に基づいて、熱水と海水を燃料にできる燃料電池(熱水-海水燃料電池)を人工熱水噴出孔に設置して、深海底での実発電に成功した。

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海底から噴き出す熱水には硫化水素のように電子を放出しやすい(還元的な)物質が多く含まれており、一方で周辺の海水には酸素のように電子を受け取りやすい(酸化的な)物質が多く含まれている。この熱水と海水の間に電子の受け取りやすさの違い(酸化還元勾配)があることに注目し、そこから電力を取り出す方法を試験した。

具体的には、熱水噴出孔とその周辺海水にそれぞれ電極を設置するというシンプルな方法で燃料電池を構築し、発電を行なった。この方法は、燃料となる熱水と海水が無尽蔵に供給されることから、電力の長期に渡る安定供給に適している。これまで海底熱水活動域での発電については温度差や蒸気を利用したものが研究されているが、それらと比較して本手法は単純な装置で発電でき、また、腐蝕に強く長期に渡り使用可能であると考えられる。

実験では,21mWのLEDライトを点灯させることに成功。今回設置した燃料電池では電極のサイズが小さいので微小な発電に留まったが,この熱水噴出孔が持つ化学エネルギーの潜在能力は2.6kWと試算されており,電極の大きさ・構造・素材などを工夫することでもっと大きな電力を取り出す事が可能であると考えられる。

今後は、長期的な試験を重ねてこのことを確かめる予定であり、活発化する深海熱水活動域での研究や開発の現場において電力を供給するための重要な技術になると期待される。

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