IEEEは9月2日,大手町ファーストスクエアカンファレンスEASTタワー2F(東京)において「世界のロボット事情と日本の現状」をテーマにプレスセミナーを開催した。
ロボットテクノロジー(RT)は特にセンサ技術などフォトニクスとも密接に関連し,また多軸ロボットと組み合わせたレーザ加工も自動車分野を始めとする様々な製造現場で導入が進み,省人化や生産効率化をサポートしている。ロボット開発では経済産業省や農林水産業が委託事業を実施している。
今回のセミナーでは産業応用につなげるRTの開発を主眼においたもので,その一例として農林業への展開を想定して開発を進めているロボットの紹介,実機によるデモンストレーションが行なわれた。この開発に取り組んでいるのが,IEEE Robotics and Automation Society,AdCom Memberで,早稲田大学総合機械工学科・教授の菅野重樹氏と,准教授の白井裕子氏だ。
菅野氏を中心とする研究グループは,いちご収穫ロボットの開発を進めており,実際に埼玉県と愛媛県のいちご栽培施設で実証実験も進めている。一方,白井氏を中心とする研究グループは伐倒作業を自動化する各種ロボットの開発を行なっている。いずれの開発のアプローチは実用化を狙っているところだ。
写真上が,いちご収穫ロボット。植物工場への導入の可能性も考えられる。下は伐倒作業を自動化するロボット。白井氏によれば,「実は伐倒作業による死亡者は多い」という。実現できれば,林業において安全・安心を提案できるとしている。
「これまでのロボット研究開発は,実用に結びつきにくいところで進められていることが少なくない」と菅野氏は指摘する。少子高齢化が進む我が国にとって,ロボットが活躍できる市場を創出するための仕組みづくりが必要という。ロボットの応用はこれまで中心だった製造業に加え,今後は非製造業やサービス分野への広がりが期待されている。