岡山大学病院光学医療診療部講師の河原祥朗氏らの研究グループは、食道癌の内視鏡治療用にムコゼクトーム 2 という新しい機器(デバイス)を開発し、その有用性を検討したところ、従来のデバイスに比べ処置時間の短縮、偶発症(合併症)の軽減につながる結果が得られた。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、胃癌に対する新しい内視鏡治療法として約10年前に日本で開発され広く普及してきている。この方法が食道癌の内視鏡治療としても応用され2008年から保険適応となっているが、食道は胃に比べ壁が非常に薄く、管腔も狭いため、治療手技が難しく、手術が長時間に及ぶこと、合併症の頻度が高いことなどが問題だった。
研究グループは以前、安全かつ短時間に胃のESDを施行するためのデバイスとしてムコゼクトームを開発し臨床応用してきた。その特徴は、安全に癌の粘膜下層の組織を剥離するために絶縁領域を増やし、流れると合併症をおこす胃の外側向きの電流をカットし内側向きにのみ流れるような設計になっていること。
今回、この技術を応用し食道癌のESD用に新たに開発したムコゼクトーム2を従来のデバイスと比較検討したところ、従来のデバイスに比べ処置時間は半分以下となり、偶発症(合併症)につながる危険因子を減らすことが可能であることがわかった。今回の成果をもとに、この新デバイスを用いることで、従来危険性が高く難易度の高い治療であった食道癌の内視鏡治療が安全な方法として行うことが可能になり、より多くの医療機関への普及に大きく貢献することが期待できる。
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