放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院治療課第1治療室医長の今井礼子氏らの解析の結果、1996~2011年に重粒子線治療を受けた切除不能な脊椎肉腫47症例(48病巣)において、重粒子線治療によって良好な腫瘍制御率、生存率が得られることがわかった。
今回の調査では、重粒子線治療の有効性および安全性を評価するために、切除不能な脊椎肉腫症例に対する治療成績と副作用について解析。その結果、治療してから5年目までに、重粒子線治療を行った場所にがんが再発しなかった割合(5年局所制御率)は79%、治療してからの5年生存率は52%だった。今まで切除できなかった症例は、がんが大きくなったり、転移を生じたりするので長期間の生存は期待できなかったことから、非常に良い成績といえる。特に腫瘍の大きさが100cm3未満(約直径6cm未満)であった15例は再発しなかった。
治療後の副作用については、重度の皮膚炎が1例、脊髄炎が1例を生じたが、生命にかかわる重篤なものは起こらなかった。また、7例は照射した脊椎の圧迫骨折により外科的手術が行われ、その後症状は改善した。最も近い時期に受診された時点で、28例の生存例のうち22例は、杖なしで歩くことができている。
この成果は重粒子線治療が、切除不能な脊椎肉腫に対する有望な治療の選択肢となることを示している。
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