東大,完全な光量子ビットの量子テレポーテーションを初めて実証

東京大学工学系研究科教授の古澤明氏と大学院生の武田俊太郎氏らのグループは,「光量子ビット」に「光の波動の量子テレポーテーション装置」を適応させる革新的手法により,世界で初めて完全な光量子ビットの量子テレポーテーションの実証に成功した。

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量子力学の原理を応用することで,現代技術の限界を超える究極的な大容量通信(量子通信)や超高速コンピューター(量子コンピューター)が実現できると予測されているが,その実現には,光子に乗せた量子ビットの信号を遠隔地へ転送する量子テレポーテーションの技術を確立することが最重要課題の一つとなっている。

しかし,従来の光量子ビットの量子テレポーテーション装置は,転送成功判定として転送後の量子ビットの測定が必要となる「条件付き」であり,なおかつ量子ビットの転送効率も原理的に低く制限される不完全なものだった。

今回研究グループが開発し,新方式で光量子ビットの量子テレポーテーションを実現したのは,従来の手法と全く異なる,「光の波動の量子テレポーテーション」の技術を光量子ビットに適用させたハイブリッド方式。光の波動のテレポーテーション装置は,もともと光量子ビットのような光子の状態ではなく,光の波としての状態(振幅や位相)を転送する装置。この装置は,従来のような条件付きでない,無条件の転送が可能であることが知られている。

よって,この装置では無条件で量子ビットの転送が可能となり,量子テレポーテーションの応用可能性が大きく広がった。更に,従来の100倍以上の転送効率61%が達成されており,原理上,100%近くにまで効率が向上できる。この装置を基本ブロック単位とし,2ブロック,3ブロックと拡張したシステムを構築していく場合,従来方式に比べ1万倍,100万倍と桁違いの効率の向上が見込める。

この成果は超大容量光通信や超高速量子コンピューターの実用化へ向けて突破口を与えるもので,量子情報処理の長年の課題を一挙に解決したマイルストーンと位置付けられるもの。

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