東大,屈折率2.2を超えるガラスの開発とその高屈折率の原因の解明に成功

東京大学生産技術研究所助教の増野敦信氏,教授の井上博之氏,高輝度光科学研究センター主幹研究員の小原真司氏,英国 ラザフォード・アップルトン研究所研究員のAlex C. Hannon氏,フランス リトラル大学教授のEugene Bychkov氏らは,無容器法を用いることで,これまでガラスにならないと考えられていた希土類酸化物(La2O3)とニオブ酸化物(Nb2O5)のみからなる組成の新しい2種類のガラスの開発に成功した。

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開発した2種類のガラスはLa2O3の含有量が多いものとNb2O5の含有量が多いものとがあり,いずれも無色透明で,かつ2.1~2.2という極めて高い屈折率を示す。屈折率の高いガラス(屈折率が1.8以上のもの)は,主にレンズとして利用されているが,無色透明で屈折率の高いガラスの開発には原理的に高いハードルがあると考えられてきた。

国際共同研究チームは,高エネルギー放射光X線と中性子線による回折実験と計算機シミュレーションを組み合わせた構造解析研究の結果,ガラスに含まれている元素のイオン性が極めて高く,かつそれらが隙間無く密につまっていることが,高い屈折率の直接的な原因であることがわかった。そしてその高密度状態が,一般的なガラスとは全く異なる局所構造によって実現されたものであることを原子レベルで明らかにした。

今回の成果は,単に新しい組成のガラスができたというだけにとどまらない。これまでのガラス科学が想定していなかった元素の組み合わせでもガラスになること,そしてそれらのガラスが極めて高い特性を持つことを,原子レベルで原理的に示した。今回の成果をきっかけとして,今後のガラス研究の枠組みが大幅に広がる可能性がある。また近い将来,携帯電話やタブレットPCのカメラの超高精細化,高解像度化や,内視鏡用のレンズの小型化に向けた製品開発につながると期待される。

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