阪大と日大、哺乳類ES細胞の新たな未分化維持機構を発見

医薬基盤研究所理事長・大阪大学名誉教授の米田悦啓氏、特任研究員の安原徳子氏らの阪大のグループと日本大学 文理学部 物理生命システム科学科教授の金子寛生氏、研究員の山岸良介氏の日大のグループは、マウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いた解析と計算構造生物学の手法を使い、動物細胞核へのタンパク質輸送を担う輸送受容体importinα2(インポーティンアルファ)が哺乳類のES細胞における未分化性を維持する機構の一端を明らかにした。

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importinαは真核生物の細胞核に、タンパク質を運び入れる輸送因子。転写因子をはじめ、核で機能する重要なタンパク質の輸送に関わる。これまでに、importinαの1つであるimportinα2は、未分化なES細胞で高く発現すること、さらに初期化に必要なOct3/4タンパク質などの核局在化シグナル(NLS)に結合し、その核内への輸送に働くことが知られていた。

この研究ではこのimportinα2に、既知のものとは異なる新たな核局在化シグナル認識部位があることを発見し、こちらの部位では分化を促進する特定の転写因子(Oct6など)と結合しその輸送を選択的に阻害することを発見した。つまり、importinα2は複数の基質認識部位を持ち、未分化性を維持する転写因子の輸送を促進するだけでなく、阻害活性により細胞分化を誘導する転写因子の核内輸送を阻害することにより細胞の分化を抑制するという、2つの制御を行うことで未分化性が維持されることを世界で初めて明らかにした。

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