NIMS、光学純度を容易に決定できる新しいキラルセンシング技術の開発に成功

物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点超分子ユニットMANAリサーチアソシエートのヤン ラブタ氏とMANA研究員のジョナサン ヒル氏が率いる研究グループは、若手国際研究センターICYS-MANA研究員の石原伸輔氏およびカレル大学(チェコ共和国)の研究者らと共同で、キラリティー(形は同じだがお互い重なり合わせることの出来ない鏡像対称の分子)および光学純度を簡便に測定するための新技術を開発することに成功した。

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今回の研究では、核磁気共鳴分光法(NMR)および独自開発の対称構造型ポルフィリン試薬を用いることで、光学純度を決定するための新しい技術を開発することに成功した。

この最大の特徴は、キラル構造を有さない対称構造型ポルフィリン試薬を用いることであり、この分子はキラルな測定対象物(例えば、医薬品分子)と結合しても構造異性体(ジアステレオマー)を形成しない。この特徴は、従来型の類似研究と明確に差別化される。この手法のメカニズムは、ポルフィリン試薬の構造対称性が、キラルな分子の結合によって崩れることに基づいていることを、結合平衡モデル式および、量子力学計算、分子動態シミュレーションより解明した。

また、今回開発した対称構造型ポルフィリン試薬は、高い汎用性を有しており、キラルなカルボン酸、エステル、保護アミノ酸、ケトン、アルコールなどの多様なキラル分子の光学純度を測定できる万能性も有している。

本手法を用いることで、簡便かつ迅速な光学純度決定が可能なことから、製薬業界などでの使用が期待される。また、本技術は、測定法および試薬にキラルな要素を全く含まないことから、不斉合成やキラル増幅反応などのリアルタイム解析に適していると期待される。

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