JAMSTEC、指先ですり潰すだけでナノ粒子が生成することを発見

海洋研究開発機構海洋・極限環境生物圏領域チームリーダーの出口茂氏らは、深海熱水噴出孔に見られる高温・高圧水環境での物理・化学プロセスに関する研究の過程で、指先ですり潰すという驚く程簡単な操作により、フラーレンC60の粉末から直径が20㎚を下回るナノ粒子が生成されることを発見した。

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物質に外部からエネルギーを加えて微粉化していく過程では、サイズが小さくなるにつれて、粒子の更なる微細化により大きなエネルギーを加える必要があるため、通常は一~数十㎛の大きさにまで粒子サイズを細かくするのが限界だと言われている。

研究チームは、フラーレン固体の微粉化プロセスが通常の物質とは大きく異なっており、乳鉢ですり潰すなどの簡単な操作でも直径が数十㎚程度の粒子が容易に生成することを発見している。この研究も、「そもそもどれくらい簡単な操作でフラーレンをナノ粒子にまで微粉化できるのか?」という素朴な疑問から始まったもの。

フラーレンC60の粉末(平均サイズ0.1㎜前後)1.5㎎をガラス板にはさんで指先で数分間すり潰して観察したところ、1)すり潰したC60の内の約24重量%が直径5㎛以下に微細化される、2)それらの粒子の平均サイズは256.8㎚であることが分かった。またガラス板を使わずに指先にはさんですり潰したC60中にも、数は少ないものの同様にナノ粒子が生成していることを確認した。

C60固体をナノ粒子にまで粉砕するために必要なエネルギーが、通常の物質とは比較にならないほど小さいことを示す発見。意図的な粉砕操作を加えなくてもC60の固体粉末から気付かないうちにナノ粒子が生成しうる可能性を示唆するものであり、工業ナノ材料への暴露過程を考える上での新たな問題提起につながると考えられる。

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