京大と東大、腎臓癌に関する最大規模のゲノム解析を実施

京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座 教授の小川誠司氏および東京大学大学院医学系研究科(医学部附属病院 泌尿器科)教授の本間之夫氏を中心とする共同研究チームは、100 例以上の症例を対象として、これまでで最大規模の統合的な淡明細胞型腎細胞癌のゲノム解析を行ない、淡明細胞型腎細胞癌で生じているゲノム異常・分子異常の全体図の解明に成功した。

淡明細胞型腎細胞癌は腎臓に発生する癌のうちおよそ80%を占める代表的な腎臓癌だが、現在のところ、手術による切除以外には完全な治癒を期待できる治療法がない。より有効かつ身体への負担が少ない、新たな治療法の開発のためには、遺伝子変異をはじめとして、癌細胞で後天的に生じているゲノム異常・分子病態を詳細に理解する必要があった。

研究チームは,症例のうち14 例について30 億塩基対からなるゲノム全体の塩基配列を、106 例についてゲノムのうちタンパク質をコードする領域(エクソン)の全塩基配列を解読することにより、淡明細胞型腎細胞癌で生じている遺伝子変異を同定した。

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その結果、以下の成果を得ることができた。

① 100 例を超す淡明細胞型腎細胞癌における遺伝子変異・ゲノム構造変化・ゲノムメチル化修飾・遺
伝子発現変化を網羅的に明らかとした。
② 淡明細胞型腎細胞癌がゲノム異常に基づいて複数のサブグループに分類できること。
③ メチル化状態により分類される3 つのサブグループは生命予後を反映する。
④ 淡明細胞型腎細胞癌における新規変異遺伝子が多数同定された。
⑤ VHL 異常を有さない症例においてVHL と複合体を形成するTCEB1(elonginC)に変異が同定された。
⑥ TCEB1 に変異が生じることによりVHL と複合体が形成できず、VHL 異常と同様にHIF タンパクが細胞内に蓄積される。

ゲノム解析には、東京大学医科学研究所附属 ヒトゲノム解析センター 教授の宮野悟氏の協力により、次世代シークエンサーによる塩基配列情報の収集と、スーパーコンピュータによる高速度のデータ解析を行なった。

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