理研、アフリカ系米国人で抗凝固薬の効きやすさに関連する遺伝子多型を発見

理化学研究所は、アフリカ系米国人における抗凝固薬「ワルファリン」の効きやすさに関わる一塩基多型(SNP)を発見した。

抗凝固薬のワルファリンは、心房細動などにより血が固まり血栓ができやすい状態の患者が、脳梗塞などの血栓性疾患になることを予防するために世界中で使われている。しかし、効き目の個人差が非常に大きいため投与量のコントロールが難しいことが問題になっている。例えば、ワルファリンの服用開始後の投与量の調整がうまく行かない場合は、脳出血や消化管出血など重大な出血性の副作用や不十分な効果による血栓性疾患につながる。

一方、これまでの研究から、ワルファリンの効きやすさに関連する2つの遺伝子(CYP2C9とVKORC1)が発見されていた。2009年に共同研究チームは、世界中からの約5000人分の患者のデータ(遺伝子多型、年齢、人種など)を基にワルファリンの適切な投与量を予測する計算式を構築した。その結果、欧米人やアジア人に比べて、アフリカ人における投与量の予測精度は低いものだった。

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共同研究チームは、ワルファリンを服用しているアフリカ系米国人533人の患者のDNAサンプルを用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、第10番染色体に位置するSNP(rs12777823)がワルファリンの効きやすさに関連していることを突き止めた。

このSNPにおいて、アデニン(A)を2つ持っているAA型やアデニンの1つがグアニン(G)に変化したAG型の患者では、ワルファリンが効きやすくワルファリンの減量が必要なことが分かった。また、この新規SNPを計算式に組み込むことで、予測精度が21%向上した。

今回の成果により、ワルファリンを個人個人に適切な量で投与できるようになり、出血性の副作用の回避や個人に最適なワルファリン療法の確立に向け着実な一歩を踏み出したといえる。

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