京都大学教育学研究科特定助教(当時は文学研究科大学院生)の鹿子木康弘氏、文学研究科博士課程3回生の奥村優子氏、同教授の板倉昭二氏、電気通信大学特任助教(当時は豊橋技術科学大学)の井上康之氏、豊橋技術科学大学准教授の北崎充晃氏らのグループは、共同研究において、前言語期にある10ヶ月の乳児が苦境にある他者に対して、原初的な同情的態度をとることを発見した。
本研究グループは、幾何学図形のアニメーションを用いて、犠牲者と攻撃者の相互作用を乳児に見せ、犠牲者と攻撃者の図形やその実物を対にして提示した際に乳児がそれらの役割を区別し、犠牲者である幾何学図形に対する注視や、その実物に対する接近がみられるかどうかを検証した。
その結果、乳児は攻撃者よりも犠牲者に対して選択的な接近行動を示した。また幾何学図形の相互作用に接触がない場合には、このような選択的な反応は見られなかった。さらにこの反応は、中立図形が加えられ、中立図形と各幾何学図形(攻撃者、犠牲者)とを対にして提示した際にも維持された。
これらのことから、本研究グループは、前言語期にある10ヶ月の乳児が苦境にある他者に対して原初的な同情的態度をとると結論付けた。この苦境にある他者への反応は、後に発達する、より成熟した同情行動の基盤となっているかもしれない。
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