NIMS、優れた光安定性、フルカラー発光するアントラセン液体を開発

物質・材料研究機構高分子材料ユニット有機材料グループ主幹研究員の中西尚志氏らの研究チームは、汎用の有機蛍光色素であるアントラセンを基とした、優れた光安定性をもつ、フルカラー発光する液体材料を開発した。

中西氏らは、蛍光を示す汎用色素分子であるアントラセンの周りに枝分かれした柔軟性の高いアルキル鎖を結合することで、アントラセン部位間の凝集がなく、融点が約-60℃、約300℃までの熱安定性、および青色蛍光を示す液状物質を開発した。

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この物質は、室温で粘度が約0.3 Pa-sの低粘性の液体であり、絶対蛍光量子収率が約55%、市販のアントラセン色素に比べ5倍以上の光安定性をもつ青色発光液体である。さらにこの液体内に他の粉末状発光色素を均一に混和することができ、単色(365 nm)の光励起から96%に達する色素間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を経て、発光色をフルカラー制御できることを見出した。

この研究では、優れた光安定性のアントラセン青色発光液体を合成した。この液体内に他の色素を混和する簡便な操作のみで、高精度に発光色を調整でき、良質なフルカラー発光を示す液体材料の開発に至った。ここで開発した不揮発性液体材料は、様々な形状の基材表面に塗布でき、単色光励起の安定な有機マルチカラーデバイスの創製が期待できる。また、液体材料は折り曲げても断裂、破断せず連続活性層を保持できるため、折りたたみ可能(フォールダブル)なフレキシブル素子の開発に好都合である。

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