横市大,動脈硬化症のリスクを予測する自己抗体の解析に成功

横浜市立大学学術院医学群 循環器内科学准教授の石上友章氏は,愛媛大学プロテオサイエンスセンター教授の澤崎達也氏,横浜市立大学微生物学教授の梁明秀氏,同大分子病理学教授の青木一郎氏らとの共同研究を行ない,動脈硬化症患者血清中に複数の自己抗体が存在することを明らかにした。

愛媛大学プロテオサイエンスセンターでは,洗浄小麦胚芽抽出液を使って,無細胞系での高効率なタンパク合成技術を確立している(セルフリー技術)。本研究では,セルフリー技術により,N末端にビオチン結合配列を導入した約2000種類のタンパク質を合成し,動脈硬化症患者より採取したプール血清と反応させることで,合成タンパク質と結合する血清中のヒトγグロブリンIgGを高感度・ハイスループットに検出するアッセイ法を開発し,初めて動脈硬化症患者血清中の自己抗体解析に応用した。

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石上氏はプール血清に対して得られたデータに対し,自然言語処理を応用したtext miningによるバイオインフォマティクス解析を行ない,19種類のタンパク質を同定した。さらにサイトカインであるIL5に着目して解析を進めたところ,患者血清中の抗IL(インターロイキン)5抗体が有意に高値であることが明らかになった。

さらに閉塞性動脈硬化症,冠状動脈硬化症,健常成人の個別血清に対して,抗分泌型IL5抗体価を測定したところ,健常成人に比較して,PAD・CAD群で有意に抗体価が高値を示すことが明らかになった。全データに対して多変量回帰分析を行なったところ,患者血中の自己抗体がIL5の働きを抑制している可能性が示唆された。

この研究は,動脈硬化症の新規バイオマーカーとして,血中自己抗体・抗IL5抗体の測定の臨床応用をもたらすばかりでなく,炎症の永続性を特徴とする本症の基盤に,自己抗体を介する自己免疫現象がかかわっている可能性を明らかにした成果。研究で用いた高感度なハイスループット自己抗体アッセイを応用することで,動脈硬化症ハイリスク患者のリスク診断や,個別化医療の実現をもたらす可能性がある。

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