理化学研究所は、カメ類2種(スッポンとアオウミガメ)のゲノム解読を行った結果、カメの進化の起源と甲羅の進化に関して遺伝子レベルの知見を得ることに成功した。これは、理研発生・再生科学総合研究センター形態進化研究グループグループディレクターの倉谷滋氏と研究員の入江直樹氏、中国ゲノム研究機関BGI、英国ウェルカムトラストサンガー研究所、欧州バイオインフォマティクス研究所らをはじめとする国際共同研究グループによる成果。
爬虫(はちゅう)類であるカメは、甲羅をはじめ肩甲骨の位置や頭部骨格などにユニークな特徴を持つため、その進化の起源や甲羅の進化については諸説あり、謎が多いが、これらの謎の解明を目指して2011年に国際カメゲノムコンソーシアムを設立、超並列シーケンサーや大型計算機といった先端機器を駆使してゲノム解読を進めた。
カメ類に属するスッポンとアオウミガメのゲノムを解読した結果、カメがワニ・トリ・恐竜に近い進化的起源を持ち、約2億5000万年前の生物大量絶滅期(P-T境界)前後に独自の進化の道を歩み始めたことを突き止めた。これは、カメがトカゲやヘビに近いなどの諸説を覆し、長年の論争に決着をつけるもの。これまで、爬虫類のゲノム解読はトカゲとワニに限られており、今回の成果は恐竜を含めた陸上脊椎動物の進化を理解する上で基礎的な知見となる。
さらに、カメのように特異な形態を獲得した動物でも、脊椎動物に共通な構造を形作る基本設計(ファイロタイプ)は発生過程において極めてよく保存されており、ファイロタイプを作りあげた後に、甲羅などの特殊な構造を作り出している様子が明らかになった。これは、脊椎動物の進化がこの保守的な発生段階によって制限されているという可能性を示すもので、動物がどんな進化をする可能性を持っているのかを理解する上で極めて重要。また、1,000個以上の嗅覚受容体をコードする遺伝子をゲノム内に発見し、爬虫類の仲間にも哺乳類に匹敵するほどの嗅覚能力を持つ動物が存在しうることが初めて明らかになった。
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