自然科学研究機構生理学研究所助教の佐野裕美氏、教授の南部篤氏らの研究チームは、大脳基底核内部の神経回路の一つである線条体-淡蒼球投射経路が手や足の運動をストップさせる機能を担うことを、遺伝子改変マウスを用いた実験で実証することに成功した。
実験の結果、これまでの定説と異なり、線条体-淡蒼球投射経路をなくしても、自発的な大脳基底核からの出力信号(黒質網様部の活動)は変化しなかった。また、大脳皮質を刺激して運動の指令を出したところ、正常なら大脳基底核の出力信号に三相性(興奮―抑制―興奮)の反応が見られるところが、三相目の遅い興奮が見られなくなった。
線条体-淡蒼球投射経路をなくすと、手や足の「運動」をストップさせる機能がなくなることが知られている。このことから、大脳基底核の出力信号の三相目の遅い興奮が、手や足の「運動」をストップさせる役割を果たしていることがわかった。
ハンチントン病やパーキンソン病といった難治性神経疾患で起きる手や足の「運動」の異常は、脳の大脳基底核と呼ばれる部分の異常により生じることが知られており、今回の成果はこれらの病気の病態生理の解明や治療法の開発につながるものと期待できる。
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