九大、体内のナトリウム濃度を調節するホルモン・アンギオテンシン II が味の受容能を変化させることを発見

アンジオテンシン II は、視床下部、副腎や血管などの受容体を介して、血圧調節や体内 Na+濃度バランスの恒常性維持の鍵ホルモンとして知られている。九州大学大学院歯学研究院主幹教授の二ノ宮裕三氏と准教授の重村憲徳氏らは、このアンジオテンシン II が末梢の味覚器にも働き、塩味感受性を変化させナトリウムイオン(Na+)の摂取量を調節することや、さらに甘味感受性にも影響し糖分摂取にも関わることを明らかにした。

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アンジオテンシン II は、まずすばやく味細胞の AT1 受容体に働き塩味感度を抑制。それにより、通常は嫌う高濃度の Na+への嗜好性を高め摂取量を増加させる。その後、副腎でアルドステロンの合成を促進させることにより Na+吸収と塩味の受容に働く上皮性 Na+チャネル(ENaC)を活性化し、体内に Na+を速やかに取り込むとともに塩味感度を上げ、忌避性を高めることで摂取量を抑える。

このレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の2つホルモンによる実に巧妙な時間差をもつ塩味の抑制・促進効果により、Na+摂取を調節するメカニズムが存在する可能性が示唆された。また、肥満者の高血圧の発症率は非肥満者の 2~3 倍高いことが知られているが、この背景にこの味覚器におけるアンジオテンシン II を介した Na+代謝と糖代謝とのクロストークが関与する可能性も考えられる。

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