基礎生物学研究所教授の野田昌晴氏,助教の檜山武史氏らの研究グループは,体液中のNa+濃度上昇を検出するセンサーがNaxチャンネルであり,その検出中枢が脳内の感覚性脳室周囲器官であることを解明した。
研究グループは,生体内のNaxの活性化閾値が何等かの因子によって調節を受けていると考えた。脳弓下器官(SFO)には,血圧調節ホルモンであるアンジオテンシンIIやエンドセリンの受容体が多く発現しており,これらのホルモンの中でNaxの細胞外Na+濃度感受性に影響を与えるものを探索したところ,エンドセリン-3(ET-3)が用量依存的にこれを高めることが明らかになった。
Naxは,ET-3が存在しない場合には,細胞外Na+濃度が約150 mMを超えると開口し始める。ところが,ET-3が1 nMあると135~145 mMでも開口し始めた。通常状態でもSFOにはET-3が一定量発現しており,Naxの体内での活性化閾値はこの範囲にあると考えられる。また,エンドセリン受容体のETBRが,Naxと同じくSFOのグリア細胞において共発現していることも明らかになった。
今後,エンドセリン遺伝子の発現と分泌調節機構が明らかになれば,体内の様々な部位におけるNaxの生理機能の解明が一気に進むものと期待される。
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