東大、ハードからソフトへサンゴの主役交代!?の可能性を示唆

東京大学大学院理学系研究科の井上氏らは沖縄県硫黄鳥島において、 CO2ガスが噴出し海域の酸性化が起こっている海域に限っては、炭酸カルシウムの頑丈な骨格を持つ造礁サンゴに代わって、軟体部の中に小さな骨片しか持たないソフトコーラルが密生していることを発見した。同発見は2009年にプレスリリースされ、いくつかのメディアにとりあげられた。

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その後フィールドにおいてCO2濃度や水温、流れなどの計測を行ない、さらに琉球大学において硫黄鳥島と同じCO2条件下でソフトコーラルとサンゴの飼育実験を行なった。その結果、現在の300-400μatm(ppm) のCO2ではサンゴが優占するが、800-1000μatmではソフトコーラルが優占し、 1500μatmを越えるとどちらの生育も抑制されることが明らかになった。この結果は、海洋酸性化が進んだ将来のサンゴ礁において、造礁サンゴからソフトコーラルへ、さらにどちらも生育できない海域に群集シフトが起こる可能性があることを示唆している。

海洋酸性化の研究は水槽実験による個体レベルでの研究が多い中、硫黄鳥島のように他の気体が含まれない純粋なCO2ガスが噴出し酸性化が起こっている海域は、酸性化の影響を野外環境の中において生態系スケールで見ることが出来る貴重なフィールドであり、特にサンゴ礁においては、硫黄鳥島のほかパプアニューギニアで報告されているのみである。

今回の結果から、これまで海洋酸性化によってサンゴ礁は海藻が優占する状態になると提言されてきたのに対し、ソフトコーラル群集へシフトする可能性が新たに示された。造礁サンゴはその複雑な骨格から多くの生物の棲息場となり、骨格を積み上げてサンゴ礁をつくり自然の防波堤となる。しかし、酸性化が進むとサンゴ礁のこうした機能が喪われてしまうだろう。

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