理研,マウスが父性行動を発現する神経機構の一端を明らかに

理化学研究所脳科学総合研究センターシナプス分子機構研究チーム研究員の刀川夏詩子氏、チームリーダーの吉原良浩氏と親和性社会行動研究ユニットユニットリーダーの黒田公美氏による共同研究グループは、交尾未経験の雄マウスでは、新生児マウス(仔)から発せられる化学物質(フェロモン)によって仔への攻撃行動が誘発されるのに対し、父マウスでは、そのフェロモン情報伝達が抑制され、父性行動の発現が誘発されることを明らかにした。

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行動変化の神経機構を解明するために、交尾未経験の雄マウスと父マウスそれぞれに仔マウスを提示し、どこの脳部位が活性化するかを比較した結果、交尾未経験の雄マウスでは、仔が発するフェロモンによって鋤鼻(じょび)神経回路が活性化され、仔への攻撃行動が誘発されるのに対し、父マウスでは、フェロモンを感知する入り口である鋤鼻器で既にその情報伝達が抑制されていることを見いだした。さらに、交尾未経験の雄マウスの鋤鼻器を切除して仔のフェロモン情報の感知を遮断すると、仔への攻撃行動が抑制されるとともに、父性行動が発現することも確認した。以上の結果から、雄マウスの父性行動の発現には、鋤鼻器における仔のフェロモンの情報伝達抑制が重要であることを突き止めた。

今後は、今回の成果をもとに、哺乳類に共通する父性行動発現の神経基盤の解明と、その異常の理解や予防法が確立されていくものと期待できる。

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