NTT,MEMSによる超音波「レーザ」の実現に世界で初めて成功

NTTは,MEMSに対してレーザに類似した原理を適用することにより,100万分の1以下という小さな周波数揺らぎしか持たない,高い精度の超音波振動を生成する振動子の実現に成功した。このMEMSは,全く新しい原理で動作するものとなる。

今回NTTは,高品質の結晶成長技術と微細加工技術を駆使して作製したMEMSにおいて,高いエネルギー準位と低いエネルギー準位の二つの振動状態を用いることにより,レーザにおける原子の役割を板バネ振動子に持たせることに成功した。

1

さらに,圧電効果を用いて振動状態を電気的に精密制御することにより,高いエネルギー準位の振動から低いエネルギー準位の振動に移る際のエネルギー差を,超音波振動として効率的に取り出す条件を見出すことに成功し,高い安定性の超音波を実際に作り出せることを実証した。

具体的には,幅70Hzという大きな周波数揺らぎの交流電圧を素子に加えたところ,ゆらぎが80 mHzしかない極めて周波数が安定した振動を確認した。この振動は交流電圧がある大きさを超えた時にのみ生じ,レーザ発振でみられるのと同様の「閾値特性」を示した。これらの特徴はレーザと類似しており,超音波に対して同様の動作を実現したことに相当する。

この成果は,将来的には水晶振動子より小型で高周波数かつ高精度な,半導体チップに集積可能な振動子への応用につながるものと期待される。

詳しくはこちら。