海洋研究開発機構海洋・極限環境生物圏領域領域長の北里 洋氏らの研究チームは、南デンマーク大学、マックスプランク海洋微生物学研究所、コペンハーゲン大学、スコットランド海洋科学協会等と共同で、世界で最も深いマリアナ海溝チャレンジャー海淵(水深10,813~10,900m)において、世界で初めて水深10,000mを超える超深海の海底堆積物中の酸素濃度の現場測定を実施するとともに、堆積物のコア試料の採取・有機物分析を行うことに成功した。
これらの測定結果と得られた試料を分析したところ、その周辺の深海平原(勾配の緩やかな大洋の深海底:水深6,018~6,071m)で採取したものに比べて、チャレンジャー海淵の海底の方が、(1) 生物活性を示す有機物の分解に伴う酸素消費量が多いこと、(2) 有機物量の指標となる堆積物中の有機炭素、餌として利用しやすい有機物である植物プランクトン由来の色素クロロフィルaや、その分解生成物であるフェオフィチンの濃度が高いこと、(3) 堆積物中に生息するバクテリアやアーキアなど微生物の生息密度も高いことが明らかになった。
今回の調査結果は、チャレンジャー海淵の海底は深海平原よりも有機物の供給が多く、かつ微生物の活性が高いことを示しており、「水深が下がるほど海底に到達する有機物の量が減り、生物の代謝等の活動も低下する」という超深海における生態系についての従来の考えを覆すものとなる。
詳しくはこちら。