東京工業大学大学院理工学研究科院生の本多智氏、助教の山本拓矢氏、教授の手塚育志氏の研究グループは、高分子の『かたち』を直鎖から環に変えるだけで、その高分子が作るミセルの耐熱性がおよそ40°C、耐塩性がおよそ30倍も向上することを発見した。
ヒトを含むほぼ全ての生物は、直鎖状の脂質分子から成る細胞膜を持つ。一方、極限環境に生息する古細菌と呼ばれる生物は環状の脂質分子を持つことが知られている。これを摸倣し、合成高分子によって環構造を作製した。その結果、古細菌の細胞膜のように高分子ミセルの安定性が劇的に向上した。
通常、高分子材料の性質を改善するには、分子量や化学構造を変更する必要がある。これに対し、今回の研究では高分子の『かたち』によって、材料特性が飛躍的に向上することを立証した。この方法では分子量や化学構造は変更しないため毒性や環境汚染性について懸念が少なく、強度・安定性に優れたエンジニアリングプラスチックからドラッグデリバリーシステムに代表される生体適合性材料に幅広く応用が期待される。
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