理化学研究所は,クローンマウスからクローンマウスを作り出す連続核移植を25世代繰り返し,1匹のドナーマウスから581匹のクローンマウスを作り出すことに成功した。これは,理研発生・再生科学総合研究センター ゲノム・リプログラミング研究チームリーダーの若山照彦氏(現 山梨大学生命環境学部教授),同研究員の若山清香氏,東京医科歯科大難治疾患研究所准教授の幸田尚氏,同教授石野史敏氏らの共同研究グループによる成果。
従来のクローン動物の体細胞から再びクローン動物を作り出す連続核移植(再クローニング)技術は,核移植を繰り返すごとに出産率は低下し,マウスで6世代,ウシやネコで2世代までが限界だった。この原因は,クローン技術特有の「初期化異常」が,核移植を行なうたびに蓄積するためと考えられていた。
研究グループは,2005年にトリコスタチン A(TSA)という薬剤が初期化異常を改善することを発見。このTSAを用いた実験条件を最適化しながら,1匹の雌のドナーマウスをもとに連続核移植を継続してきた結果,再クローニングで生まれるクローンマウス(再クローンマウス)の数は25世代で581匹に達し,現在は26世代目,598匹が誕生している。
核移植の出産率は1世代目の7%から上昇傾向を示し,最高で15%を記録,健康な再クローンマウスを多数作り出した。さらに,これらの繁殖能力,寿命,細胞年齢の指標となる染色体末端のテロメアの長さなどに異常がないことを確認するとともに,遺伝子の発現を網羅的に調べた結果,核移植を繰り返しても初期化異常は蓄積しないことが明らかになった。
この成果により,再クローニングの完成度をさらに高めることができると,貴重な優良家畜や絶滅危惧種のクローンを安定的に作出することが期待される。
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