台湾中央研究院の研究者を中心とする国際研究チームは,サッカーボールのような形を持つ「C60フラーレン」という炭素質のダスト(塵)を,おおいぬ座にある惑星状星雲M1-11(地球からの距離6800光年)で検出した。
C60 は地球上では極めて安定した結晶体なので宇宙空間にも存在すると考えられてきたが,米国の赤外線天文衛星スピッツァーを用いた観測によって宇宙空間に C60 が初めて確認されたのは2010年になってから。現時点で C60 はおよそ 20 天体で確認されているが,どのような環境で,どれくらい存在し,どのように形成されるのかはよくわかっていない。
今回研究チームは,赤外線天文衛星「あかり」と国立天文台岡山天体物理観測所188センチメートル望遠鏡,すばる望遠鏡で取得された,赤外線から可視光までの広い波長域の観測データを使うことで,M1-11は元の恒星の質量が太陽と同程度であることや,惑星状星雲に進化してからわずか1000年ほどしか経っていないこと,11元素の正確な組成比を明らかにした。このようにC60が生成された現場の物理状態を定量的に明らかにしたのは,本研究が初めて。
詳しくはこちら。