東大、新しい体内時計の振動原理を解明

東京大学 大学院理学系研究科大学院生の平野有沙氏と教授の深田吉孝氏は、九州大学 生体防御医研 教授の中山敬一氏らとの共同研究により、概日時計における中枢因子CRYのタンパク質量が1日周期で増減を繰り返すメカニズムを発見した。

20130304ut1概日時計は、CRYタンパク質(CRY1とCRY2)を中心とする時計因子が一日の中で合成されたり分解されたりしてリズミックな増減を繰り返すことにより駆動され、生物の睡眠・覚醒リズムやホルモン分泌リズムを生み出す。なぜ概日時計が正確に時を刻めるのかという謎の解明や、概日リズムの乱れが原因となる疾患を理解するためには、CRYタンパク質がどのように増加・減少して一日のサイクルを終えるのかを理解することが重要な課題だった。

本研究チームは、これまでにCRYの分解を促進することがわかっていたユビキチン化修飾酵素FBXL3とよく似たFBXL21が、CRYをユビキチン化修飾することによって安定化し、CRYが急激に分解されるのを防いでいることを見出した。一般的に、ユビキチン化された基質は分解される例が圧倒的に多く、この安定化機構はとてもユニークである。一方、FBXL3とFBXL21の両遺伝子を欠損した変異マウスを作成したところ、活動と休息のリズミックな周期性が徐々に崩れ、体内時計が不安定になった。体内時計を早く進めようとするFBXL3と、時計を遅らせようとするFBXL21の競合作用によって、24時間という長い1サイクルが正確に刻まれ、安定に維持されることがわかった。

概日時計が安定にリズムを刻む分子的な仕組みを明らかにした本研究は、概日リズムの異常がもたらす睡眠障害やメタボリックシンドロームなどの疾患の予防や治療に役立つと期待される。

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