高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、次世代放射光源を目指すエネルギー回収型ライナック(ERL)の実現に向け、コンパクトERL(cERL)の開発が進められている。
cERLは、高輝度電子銃、入射部超伝導空洞などからなる高輝度大電流ビームを生成する入射部と、周回するビームのエネルギー回収を行う主加速器超伝導空洞などからなる周回部、及びビームダンプ部からなり、現在、cERLの建設が進む中、2012年10月にcERLのビームラインに主加速器部の超伝導空洞のクライオモジュールが設置された。超伝導空洞は超伝導状態を保つため、ビーム運転中、2K(-271℃)の液体ヘリウムを満たした容器に、内装(ジャケット化)される。また、容器の温度を極低温に保つため、ジャケット化された超伝導空洞への常温からの入熱を防ぐために大きな断熱槽によって覆われる。これらを称してクライオモジュールと呼ぶ。
cERL用のクライオモジュールのハイパワー試験で、高加速勾配での性能劣化は見られたが、ビーム運転に向けて一通り問題なく機能することがわかった。主加速器空洞としてはビーム試験を通じてHOMの評価、ビームへの影響を調べると共に、ビーム運転時の長期的な空洞性能の確保や安定化などが今後の課題となる。特にCWで運転する9セルの超伝導空洞クライオモジュールを用いたビーム運転は世界に先駆けKEKでcERLにて、初めて行なうこととなる。
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