京大の研究グループは,ルテニウム酸化物の超伝導状態が磁場によって壊されて通常の金属状態に変わる際の相転移を研究し,絶対温度0.8ケルビン(マイナス272.4度)以下の極低温では,この相転移が水が氷になる場合と同じような一次相転移になっていることを初めて明らかにした。
これは,二次相転移のみを示す通常の超伝導体とは全く異なったメカニズムで,超伝導が壊されていることを意味するもの。さらに,これまでに知られている超伝導一次相転移のメカニズムはSr2RuO4には当てはまらないことも示唆する。即ち,これまで見落とされていた未知のメカニズムで超伝導が壊されている,ということを強く示唆する結果。
研究グループは作製したSr2RuO4の純良結晶を用い,磁場を変化させたときに試料の温度が変化する「磁気熱量効果」を詳しく調べることで,相転移が一次相転移になっていることを実証した。具体的には下図に示すように,一次相転移の特徴であるエントロピーという量の不連続的な変化と潜熱が観測できた。さらに,磁場を上昇させたときと下降させたときでの超伝導転移の起こる磁場が異なっており,これは一次相転移の特徴である過冷却現象(または過熱現象)が起こっていることを証明するもの。
この成果は,磁場と超伝導の相互作用という超伝導の理解における基本的な問題を提示しており,今後の基礎研究において重要な意味を持つもの。特に,今回明らかになった一次相転移の起源を明らかにすることは,スピン三重項超伝導体の最有力候補であるSr2RuO4の超伝導をより深く理解するために避けては通れない問題となる。それだけでなく,超伝導が磁場によって壊される新たなメカニズムを解明することは,超伝導の導電線などへの応用に関しても有用な指針を与えるもの。
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