NICT「オープンハウス2012」開催

 情報通信研究機構(NICT)は,研究内容を一般に紹介するイベント「NICTオープンハウス2012」を11月30日(金),12月1日(土)の2日間,小金井本部にて開催した。これまで子供が来場しやすい夏季に行なわれていた同イベントだが,今年は電力需給に鑑みて冬の開催となった。会場では技術講演と技術展示が行なわれ,土曜日には親子連れをはじめとして,中高生や大学生などが多く見学に訪れていた。 特に注目を集めていたのは3Dテレビやホログラムなど,見た目に分かりやすい展示であった。今回展示されていた3Dディスプレイは,直角に合わせた2枚の4Kディスプレイの像を,偏光板を貼ったハーフミラーを介して合成するもので,市販の時間分割方式3Dテレビと比べてちらつきがほとんどなく,4Kの解像度がそのまま残るため,医療用としても実用できるレベルの画質を誇る。

用いた非圧縮(7Gb/s)の映像データは,やはりNICTらが開発した光パケット・光パス統合ネットワークによって小金井⇔大手町間(120km)をリアルタイムで送信されており,他のユーザもインターネットなどで帯域を利用する環境下において,遅延・損失なく,左右2枚の4K信号を送るデモを兼ねた。

また,将来の3D表示方式として研究が進むホログラフィの表示デモも行なわれた。NICTのホログラフィは8Kの表示素子を用いる世界最大のもので,RGBの光源を備えフルカラー表示が可能。今回は装置のすぐ脇で撮影した立体映像をリアルタイムで再生するシステムとして展示した。

撮影はインテグラルフォトグラフィ方式を用いており,直径0.8mmのレンズ3万個で構成されたレンズアレイを使用する。これを4Kカメラ(8Kカメラが入手困難なため,4K画像を8Kにアップコンバート)で撮影,GPUを用いて電子ホログラフィ用データに変換する。

RGBのレーザを介して生成されたホログラフィは現時点では小さく,解像度の点でももう一つであったが,確かに未来を感じさせる展示であった。

宇宙通信ネットワークの研究も光を中心にして行なわれている。2015年には宇宙通信でも20Gb/sの帯域が必要になると予測されており,これを実現するのは光通信だけである。NICTでは1994年に地上-衛星間の光通信に成功して以来,この分野で世界をリードし続けている。

2005年には光衛星間通信実験衛星「きらり」を打ち上げ,欧州宇宙機関の衛星との双方向光通信や地上局と低軌道衛星との通信を成功させるなど,NICTは次々に宇宙空間通信の新たな挑戦を成功させており,来年度には重量6kgと小型のトランスポンダを宇宙に送り込み,実用実験を始める予定だ。

光学が未来を拓く内容が多かった中で一つ気になったのが,LED照明器具から発するEMI(電磁妨害波)の対策が不十分な製品があることを示す実験だ。いくつかのLED照明を順に点灯すると,対策が不十分な照明では近くの地デジ/ワンセグテレビが見られなくなってしまう。これほどのEMIが多くの消費者が知ることなく野放しになっているのは問題だ。電源部の回路に問題があるようだが,業界は消費者に対し,早急な啓蒙と対策を講ずるべきである。

(この実験の様子は動画サイトOPT.TVにて配信しています)

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