パナソニックは,両面放熱構造で素子の信頼性を高め,一般的にレーザー動作温度の上限である60℃においても従来の1.5倍となる4.5Wの高出力動作が可能な青紫(405nm)半導体レーザーを開発した(ニュースリリース)。
レーザー素子の温度は,「動作温度」と「熱抵抗×発熱」の和となる。これまでワット級青紫レーザーは熱抵抗が大きく,光出力増加に伴う発熱によって素子温度が上昇する。
素子の温度が高いと,キャリアオーバーフローなどにより,内部量子効率が低下する。従来品では,発熱の放熱経路は素子実装面の片面しかなく,放熱は不十分で熱抵抗10.5K/Wと大きい状態だった。
そこで同社では今回,素子のワイヤーボンド面にも放熱ブロックを形成した。これにより,素子からの放熱経路が上下両面となり,熱抵抗を6.6K/Wまで下げ,熱伝導を1.6倍に向上させることに成功した。
これにより,光出力として最大4.5Wを得ることに成功した。また,高出力化に伴う電力変換効率の低下も抑制され,3W光出力時の電力変換効率は33%を得た。この技術を用いない開発品では,最大光出力3W,電力変換効率28%だった。従って,この開発により最大光出力は1.5倍,3W光出力時の電力変換効率は1.2倍に向上した。
放熱ブロックには,レーザ素子と同じ窒化物材料である窒化アルミニウムを用いた。半導体の熱膨張率は金属の同係数と大きく異なるため,動作温度変化により,素子に大きな歪が加わって欠陥が発生する要因になるが,窒化アルミニウムを用いたことで熱膨張率差による応力を,銅放熱ブロック使用時に比べ1/10に抑制した。また,窒化アルミニウムは窒化物材料の中で最も熱伝導が高く,高い放熱性が得られる。
一方,窒化アルミニウムは高抵抗(絶縁体)であるため,電気接続が難しくなる。今回,素子やサブマウントと接触をする各表面や内部に電極を有し,それらの電極と表面をビアホールで電気的接続した立体配線を放熱ブロックの内部に作りこんだ。これにより,高抵抗窒化アルミニウムを放熱ブロックに用いた場合でも電気接続ができ,素子のワイヤーボンド面に窒化アルミニウム放熱ブロックを形成することが可能になった。
同社では,レーザーヘッドランプなどの車載・産業用照明やレーザー加工機など,半導体レーザー応用システムの小型,低消費電力化への適用に向け,2019年頃の製品化を目指すとしている。
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