東京大学情報理工学系研究科 石川・渡辺研究室と東京エレクトロンデバイス(TED)は共同で,8bit階調の映像を最大1,000fpsのフレームレートで投影することができる高速プロジェクタ「DynaFlash」を開発した(ニュースリリース)。
この共同研究は2014年5月からスタート。当初は高速ビジョンやアクチュエータの高速化を図った。課題となったのはディスプレイの高速化だったという。1,000fpsというフレームレートを達成するため,TEDが回路設計と試作を行ない実現した。
今回開発した高速プロジェクタは,米国Texas Instruments社製のDLP DMDチップ(Digital Micromirror Device)と高輝度LED光源を用い,最大1,000fpsで8bit階調の映像を最小遅延3msで投影するもので,FPGAに組み込んだ高速制御回路を新たに開発し,これを用いてDMDとLEDを高速に制御することで,高いフレームレートを実現した。
7月29日には開発成果と試作システムによるデモンストレーションが行なわれた。移動する対象物の位置と方向を500fpsの高速ビジョンで検出し,その位置と方向に対する映像をコンピュータで作成して投影させるというもので,投影像があたかも対象物に印刷されたかのように表示される。
従来のディスプレイでは,運動の速度に対してディスプレイの速度が不足しているため,大きなズレを生じていた。これに対して,開発したシステムでは高速処理を実現することで,ズレのない映像を得ている。
今後はデバイスのカラー化やシステム全体における更なる遅延低減,高速ビジョンと連動した高速3次元計測・ARシステム・変形柔軟体へのプロジェクションマッピング,部品ピッキングなど様々な応用システムの開発を進めるとしている。
また,TEDではこの高速プロジェクタを自社ブランド「inrevium」として,2016年夏頃に販売を開始する予定で,アプリケーションの開拓を進める。