東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構・教授の荒川泰彦氏と特任助教の舘林潤氏らは,ナノワイヤ量子ドットナノレーザの室温動作に成功したと発表した。
今回開発したレーザは直径が290nm,長さが4.3μmの半導体ナノワイヤの中に50層の量子ドットを積層させたもので,量子ドットの光利得と単一のナノワイヤの両端をミラーとした共振器構造となっている。
ナノワイヤ中に量子ドットを積層させるにはナノワイヤが必須となるが,研究グループではMOCVDによるGaAsナノワイヤの選択成長技術を確立。成長したナノワイヤ中にInGaAs/GaAs多層ヘテロ構造を成長することにより,高さ7nm,幅45nmの50層量子ドットを形成し,さらにGaAs/AlGaAs/GaAsコアシェル構造で被覆し,量子ドットを埋め込んだナノワイヤ構造とした。
コアシェル構造としたことで,キャリアの量子ドット発光層への効率的な閉じ込めを実現。これにより,300K=27℃の室温でも十分な発光を得ることに成功した。また,デバイス性能の指標となる特性温度は133Kと,従来のナノワイヤレーザの最高値109Kと比べても高い値を得たという。
ナノワイヤレーザは,従来の半導体レーザと比べて,1万から10万分の1の非常に体積の小さいレーザ発振を可能にするため,光電子集積回路への実装が期待されている。また,環境・生体分野への応用開拓が図れるものと考えられており,さらなる研究開発を進める予定だ。
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