筑波大学と東北大学は，高温超伝導現象を説明するための新しい理論を提案した（ニュースリリース）。これまで，1957年に発表されたBCS理論が，およそ30～40K（-243～-233℃）以下の超伝導現象の説明において標準理論として成功を収めてきた。しかし，液体窒素温度を超える高温領域で超伝導を示す銅酸化物が発見されたことで，BCS理論には限界があると認識されていた。

今回，研究グループはBCS理論に基づく交流ジョセフソン効果の予言と実験との間に矛盾があることを見いだした。そして，銅酸化物超伝導を説明するために2011年に提案した「スピン渦誘起ループ電流による超伝導理論」が，その矛盾を解消することを示した。

これは，「スピン渦誘起ループ電流による超伝導理論」が銅酸化物超伝導を説明するに留まらず，BCS理論を超える新しい超伝導の標準理論となる可能性を示しすもの。研究グループはこの新しい理論が，金属以外の物質でも超伝導現象が起こることを予言するため，超伝導の新たな地平が広がることが期待されるとしている。

図はジョセフソン接合の実験の模式図。2つの超伝導体SLとSRが非超伝導体で挟まれている。矢印は電流の向き，Vは電圧計。Iは電流計。上図がジョセフソンの予言の配置図。下が実際の実験での配置図（上図にはない，直流電流が供給されている）。今回の研究では，下図の配置に基づく計算を行なった。

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