NECは,情報通信研究機構(NICT)の委託研究により,テラヘルツ(THz)アレイセンサの新画素構造を開発し,0.5~0.6THz付近において,同社比約10倍の最小検知パワーの向上を実現した(ニュースリリース)。
また,同社は今まで画素数320×240のアレイセンサを搭載したTHzカメラを製造・販売しているが,今回4倍の画素数の640×480アレイセンサの製造技術を開発し,同アレイセンサを搭載したカメラも開発した。この画素数は,THzの周波数領域では世界最大の画素数となる。
さらに,隣り合うピクセル同士をまとめる4×4のピクセルビニング処理により信号雑音比を更に4倍に向上させ,新画素構造の効果と合わせて最小検知パワーを約40倍に向上し,室温動作の2次元アレイセンサとしては同周波数領域で世界最高感度を実現した。
室温動作の小型THzカメラの技術開発動向として,赤外線検出技術をより長波長(低周波)の電磁波であるTHz波の検出に応用するアプローチと,電波の高周波回路技術を電波よりもっと高周波のTHz波の検出に応用するアプローチがある。0.5~0.6THz付近の周波数領域(波長に換算すると500~600µm)は,今まで上記両アプローチではカバーできておらず,THzギャップと呼ばれていた。
同社は,THzアレイセンサの新画素構造の開発により,この領域での最小検知パワーを1桁向上させることに成功。また,500~600µmというTHz波としては長い波長の電磁波の検出であることを考慮して,4×4のピクセルビニング処理により信号雑音比を更に4倍に向上し,新画素構造の効果と合わせて約40倍の最小検知パワーの向上を達成し,THzギャップを埋めることができたとしている。
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