物質・材料研究機構(NIMS)を中心とする研究チームは,世界最高磁場となる超1GHz-NMRシステムの開発を目指している。今年8月から超伝導磁石の磁場を徐々に上げていく作業を開始していたが,9月17日に950MHz(22.3テスラ)の国内最高磁場を発生させることに成功した(プレスリリース)。
開発を行なっているのはNIMS(極限計測ユニット強磁場NMRグループ,超伝導線材ユニットマグネット開発グループ,強磁場ステーション)を中心としm他に理化学研究所,神戸製鋼所,JEOL RESONANCEなどからなる研究チーム。
950MHzという磁場強度は,国産技術としてはNIMSが2004年に達成した930MHz(21.8テスラ)を超える新記録であり,また現在国内で稼働するNMRの最高磁場(大阪大学で稼働中のドイツ製950MHz)と並ぶ磁場強度。
この超伝導磁石の最大の特徴は,ビスマス系高温超伝導線を用いることによって,従来技術の限界だった1GHz(23.5テスラ,2009年ドイツが達成)を超える磁場を発生させることが可能になる点にある。
この開発は,科学技術振興機構(JST)先端計測「超1GHz NMRシステムの開発」として平成18年度より開始されたが,その後,東日本大震災による損傷,丸2年にわたる大修理,平成25年度のヘリウム危機,研究代表者の急死など,数々の困難を乗り越えて来た。
NIMSでは1GHzを超える磁場でNMR測定を実現させる最終目標を目指し,磁場を上げる作業を続けるとしている。
関連記事「NIMS,ジスプロシウムフリーのネオジム磁石を開発」「原研,ナノスケールの極薄磁石の向きを垂直にそろえる新機構を発見」