東京医科歯科大の研究グループは,アルツハイマー病モデルマウスおよびアルツハイマー病患者脳のタンパク質を網羅的に解析し,発症前さらには老人班と呼ばれる異常タンパク質凝集が開始する前に,タンパク質リン酸化シグナルの異常が超早期病態として存在することを発見した(ニュースリリース)。
アルツハイマー病の治療開発においては,発症前の早期病態を解明することが現在の最重要課題とされている。アルツハイマー病は,脳組織の細胞外に老人班,細胞内に神経原線維変化という2つの特徴的な異常構造物が存在することが特徴。
前者はアミロイドベータ,後者はリン酸化タウというタンパク質の異常沈着であることが明らかにされている。2000年代以後,アミロイドベータの脳内凝集メカニズムをターゲットとする主として2つの治療法が考案され、アルツハイマー病患者への臨床試験に至っているが,いずれも有効性は確認されていない。
今回の研究では,アルツハイマー病モデルマウス4種類とアルツハイマー病患者の死後脳を対象に最新型の質量分析機を用いてプロテオーム解析を行なった。さらに,東京大学ゲノム解析センターと共同研究を行ない,プロテオーム解析で得られた膨大なデータをスーパーコンピュータで解析した。
さらに,これらのビッグデータ解析から最終的に得られたコア分子を標的として,モデルマウスを用いた治療実験を行ない,シナプスレベルの改善を認めた。
その結果,超早期のコア病態シグナルネットワークあるいはコア病態分子をターゲットとする治療法の可能性を見出すことができた。研究グループは,これらの治療法がアルツハイマー病の進行を抑制し、治癒に導く可能性があるとしている。
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