日本電気(NEC)は,非食用植物資源のセルロースを主成分に用いた高機能バイオプラスチック(「セルロース系・高機能バイオプラスチック」)を,従来の1/10という低エネルギー(低CO2排出量)で合成できる新しい製造技術を開発した(プレスリリース)。
NECが独自に開発した「セルロース系・高機能バイオプラスチック」は,木材や藁などの主成分のセルロースに,農業副産物のカシューナッツ殻に由来する油状成分のカルダノールを化学結合することで合成される。
熱可塑性・耐熱性・耐水性などに優れるとともに,植物成分率が高い(約70%)という特長があり,電子機器などの耐久製品への実用化を予定している。使用するカルダノールは,東北化工との共同で,反応しやすい構造に化学的に変性したものを利用した。
開発した製造技術は,従来のように原料のセルロースを有機溶媒に溶解(均一系)させず,ゲル状に有機溶媒で膨らませた状態(不均一系)にした上で,上記のカルダノール(長鎖成分)と酢酸(短鎖成分)を2段階で結合して樹脂を合成する。このため,溶液からの沈殿分離などによって生成樹脂を容易に回収できる。
このプロセスは,ほぼ常圧・中温(100℃以下)での反応条件を達成するとともに,従来の均一系プロセスで必須であった生成樹脂を分離するための溶媒が不要となるため,合成に必要な溶媒量の大幅な削減(従来プロセスの約90%減)を実現する。
これらにより,従来に比べ,約1/10の製造エネルギー(CO2排出量)で,高機能なセルロース系バイオプラスチックの製造が可能になることから,将来量産を行なう際には,製造コストの大幅な削減が期待される。