マックス・プランク研究所やJAXAインターナショナルらの研究チームは,アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星と欧州宇宙機関(ESA)のXMMニュートン衛星を用いて,かみのけ座銀河団の中に,高温ガスの巨大な「腕」を多数発見した。一つの銀河団の中に,このように長い高温ガスの腕が,しかも多数発見されたのは初めてのこと。
少なくとも50万光年の長さを持つこれらの腕は,かみのけ座銀河団が,どのように小さな銀河群や銀河団との衝突を経て,宇宙で最も巨大な重力的に結びついた構造の一つになったのかを教えてくれる。チャンドラ衛星のデータを詳細に解析して得られたX線画像(赤)と,スローン・デジタル・スカイサーベイの可視光画像(白・青)を重ねることによって得られた新しい画像には,目を見張るような腕の特徴を見て取れる。
これらの腕は,小さな銀河団がかみのけ座銀河団と衝突するときに,かみのけ座銀河団の高温ガスの向かい風によって、銀河からガスがはぎ取られてできたのであろうと,考えられている。
高温ガスの腕の広がりや,その中での音速(時速約400万キロメートル)から,この新発見された腕は,およそ3億年前にできたのであろうと推定される。さらにこの腕は,いくぶん滑らかな形をしている。今回発見された滑らかな形の長い腕 は,かみのけ座銀河団が何度も衝突を起こしたにも関わらず,高温ガスが思いのほか穏やかな状態にあるという驚くべき事実を示している。
二つの腕は,ニュートン衛星のデータから少なくとも150万光年の長さを持つさらに大きな構造と繋がっており,かみのけ座銀河団中心部から200万光年先にある銀河群まで伸びているように見える。また,ある銀河の後ろにはとても薄い「尾」が見られる。これはおそらく,銀河団や銀河群に加え,一つの銀河からも高温ガスがはぎ取られている証拠である。
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