横浜市大、小児の難治性てんかんの原因遺伝子を発見

横浜市立大学学術院医学群遺伝学准教授の才津浩智氏、教授の松本直通氏ら研究グループは、小児の難治性てんかんの原因遺伝子の一つを発見した。

130904yokohamacu1

てんかんは、人口の1%近くの患者がいると推定されおり、抗てんかん薬によるコントロールが難しい(難治性)症例も多く存在する。有効な治療法の開発のためにも、その原因遺伝子を明らかにすることが重要である。

共同研究グループは、全エクソーム解析という新しい研究手法を応用し、379例の難治性てんかん患者中4例にGNAO1遺伝子の新生突然変異を認めた。4つの変異は虫から哺乳類まで同じように持っているアミノ酸に変化をもたらす。4名の患者は、難治性のてんかんに加えて、知的障害、運動発達障害を呈し、うち2名には、意図しない異常運動が起こる不随意運動を認めた。

GNAO1遺伝子からは、神経細胞における細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たすことが知られている3量体Gタンパク質3)のαサブユニット(Gαo)が作られる。3量体Gタンパク質の立体構造モデルにおいて、4つの変異はタンパク質構造を不安定にする、あるいはシグナル伝達の障害を引き起こすことが示唆され、変異Gαo発現細胞では、細胞内での発現部位の変化とカルシウム電流の抑制障害が示唆された。この遺伝子は、3量体Gタンパク質による細胞内のシグナル(情報)伝達に関与しており、シグナル伝達の異常がてんかんを引き起こすことが示唆された。

この発見は、治療に抵抗性を示す難治性のてんかんの原因遺伝子を明らかにしたばかりでなく、細胞内シグナル伝達の障害という新しいてんかんの発症メカニズムを強く示唆するもの。今後、細胞内シグナル伝達という観点からてんかんの病態の理解がすすみ、難治性てんかんの新しい治療法の開発に大きく寄与することが期待される。

詳しくはこちら