情報通信総合研究所は,情報通信(ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために,九州大学教授の篠﨑彰彦氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しており,最新版の2013年1-3月期を発表した。
それによると,2013年1-3月期のICT経済は前年同期比マイナス3.3%と9四半期連続のマイナスとなり,マイナス幅は1.5%ポイント拡大した。スマートフォン,特にアップルの「iPhone」向け部材需要の弱含みなどにより財部門の減少幅が拡大した。
ICT経済全体では前年比でマイナスを続けている中,ICTサービスはわずかながら増加に転じている。主に、企業や自治体向けソフトウェアやゲームソフトなどソフトウェアプロダクトの増加が引き上げ要因となった。
需要面では,ICT経済は設備投資(民需)を除き前年に比べてプラスに転じている。個人消費はスマートフォンユーザの拡大を背景に,データ通信料や端末への支出が増加し,2011年4-6月期以来の前年比プラスとなった。ただし,テレビは地上波デジタル完全移行後の需要低迷が継続している。設備投資(ICT機械受注(官公需))は5期連続で増加した。
一方,設備投資(ICT機械受注(民需))は減少ペースが加速した。半導体製造装置は6四半期ぶりにわずかに増加に転じたものの,電子計算機,通信機が減少に転じ,3期連続の減少となった。ネットワーク強化のための設備投資の一巡を背景に,通信業向けの基地局設備とサーバ等が減少したことが主因。
輸出入の増加には急速に進んだ円安により円換算の金額が膨らんだ影響が少なからず含まれる。輸出入全体では,金額ベースでは前年比増加に転じたが,数量ベースではマイナスとなっており,ICT輸出入についても同様の傾向となっている。
以上のように,1-3月期のICT需要は個人消費と設備投資(ICT機械受注(官公需))に支えられており,景気回復がいまだ広がりを欠いていることが伺える。2013年4-6月期を展望すると,ICT財の生産はマイナス幅を縮小させることが期待される。これはICT在庫の調整が進展し,生産を回復させる余地があるため。
とりわけ,スマートフォン・タブレット端末や車載向けの電子部品生産は増加が見込まれる。月次ベースで3月のICT財部門は前年比でマイナスとなったが,電子部品に限ればプラスに転じており,製造工業生産予測調査では電子部品・デバイス工業の生産は4月(6.5%増),5月(8.6%増)と拡大が見込まれている。
ICTサービス部門は,法人向け情報サービスが緩やかに回復している上,eコマースサイト運営等インターネット付随サービス業は増加を維持している。今後もサービス部門の好調さが持続し,ICT経済を下支えするものとみられるとしている。
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