理研、抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明

理化学研究所(野依良治理事長)は、哺乳類の子どもが親に運ばれる際にリラックスする「輸送反応」の仕組みの一端を、ヒトとマウスを用いて科学的に証明した。これは、理研脳科学総合研究センター黒田親和性社会行動研究ユニット国際特別研究員のジャンルカ エスポジート氏と研究員の吉田さちね氏、ユニットリーダーの黒田公美氏らと、精神疾患動態研究チーム、トレント大学、麻布大学、埼玉県立小児医療センター、国立精神・神経医療センター、順天堂大学による共同研究グループの成果。

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私たちは、母親が赤ちゃんを抱っこして歩くと泣き止んで眠りやすいことを、経験的に知っている。これを「輸送反応」と呼ぶが、これらの子どものおとなしくなる反応についてはあまり科学的な研究がされておらず、その意義や反応を示すときの神経メカニズムも不明だった。

まず生後6カ月以内のヒトの赤ちゃんとその母親12組の協力を得て、母親に赤ちゃんを腕に抱いた状態で約30秒ごとに「座る・立って歩く」という動作を繰り返してもらった。その結果、母親が歩いている時は、座っている時に比べて赤ちゃんの泣く量が約10分の1に、自発的な動きが約5分の1に、心拍数が歩き始めて約3秒程度で顕著に低下することを見いだし、赤ちゃんがリラックスすることを科学的に証明した。

次に、母マウスが仔マウスを運ぶ動作を真似て、離乳前の仔マウスの首の後ろの皮膚をつまみあげると、ヒトの場合と同様に泣き止み、リラックスして自発的な動きと心拍数が低下し、体を丸めた。さらに、体を丸めて運ばれやすい姿勢をとるには運動や姿勢の制御を司る小脳皮質が必要なこと、おとなしくなる反応には首の後ろの皮膚の触覚と、体が持ち上げられ運ばれているという感覚の両方が重要であることが分かった。また、この仔マウスの「輸送反応」を阻害したところ、母親が仔マウスを運ぶのにかかる時間が増加することも分かった。

今回の成果から、哺乳類の赤ちゃんはおとなしくなる「輸送反応」によって自分を運んでくれる親の子育てに協力しているといえる。またこのような研究は今後、科学的な知識に裏付けられた子育て方法のための新しい指針作りに役立つと期待できる。

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