月刊OPTRONICS 特集序文公開

アルツハイマー病に対する光認知症療法の開発

1.はじめに

アルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)研究は,剖検脳の神経病理学に始まり,生化学研究から,家族性アルツハイマー病の遺伝学,分子生物学研究を契機に飛躍的に進んだ。そしてアミロイドβ(Amyloid-β protein;Aβ)およびタウと呼ばれる2 つのタンパクの異常凝集及び蓄積が,その発症プロセスに大きく関わっていることが明らかとなった(図1)。

特に家族性ADに連鎖する遺伝子変異の研究と,孤発性ADにおけるバイオマーカーを利用した大規模臨床観察研究から,ADはAβ 蓄積誘導性二次的タウオパチー(タウ蓄積疾患)として捉えられるようになった。一方,病理学的に古くから知られていたグリア細胞の活性化については,これら蓄積物の出現の結果や,神経変性に伴って生じる現象ではないかと考えられてきていた。しかし主にゲノムワイド関連解析によって見出されたアルツハイマー病発症リスクに関わる遺伝子の同定及びその解析を通じて,このグリア細胞の炎症応答そのものが神経変性やタンパク質凝集病理形成に大きく影響することも明らかとなった。

そして凝集Aβ を認識する抗体によって脳内Aβ 蓄積が消失すること,そのメカニズムとしてAβ-抗体複合体がミクログリアによって貪食,分解されることが示唆され,最終的にレカネマブおよびドナネマブが承認された。これらの成果は,不治の病と考えられてきたADに対して人類が抵抗する大きな一歩を達成したといえる。しかしその薬効は限定的であり,認知機能の低下の抑制にとどまる。そこで新たなAD治療戦略の開発が求められている。

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