月刊OPTRONICS 特集序文公開

フォトニック結晶を用いた緑色面発光レーザー

1.はじめに

緑色レーザーは,従来,YAGベースやHe-Neレーザーがこの波長範囲で利用されてきた。これらの固体/ガスレーザーはビーム品質に優れる一方で,低い電力変換効率(WPE)による高い消費電力とサイズが大きいなど,広く使用する上で問題点もあった。これに対して,GaN系半導体レーザーは,高いWPEによる低消費電力とコンパクトなサイズが利点となる。1995年にGaN系端面発光型レーザーダイオード(EELDs)での初めて発振を確認されて以来,その特性は年々向上し,発振波長範囲も緑色から紫外線まで拡大している。緑色半導体レーザーに関しては,図1 に示すように中心波長525 nmEELDs の光出力および電力変換効率は1.97Wおよび25.2%に達している。

このように高効率な緑色半導体レーザーは,可視光の中でも特に人間の目に敏感な波長域に位置することから,視覚的な明るさや色再現性に優れ,特に映像や医療などで応用が期待されている。

RGB(赤・緑・青)の3種類の高出力なレーザーを用いたプロジェクションシステムは,図2に示すデジタルシネマ規格(DCI)に対応した高い色再現性による鮮やかな映像を実現できる。図3に実用例を示す。青および緑色レーザー(OctoLas)は,複数の半導体レーザーチップを1つのパッケージに実装することで小型と高出力を両立することができ,このレーザーモジュールは,映画館用プロジェクターシステムに広く使用されるようになってきている。また,レーザーモジュールを小型化することで家庭用プロジェクターへも展開も期待されている。

また,緑色半導体レーザーは,医療分野でも多くの応用がある。例えば,眼底の検査では,通常,赤外線を用いたOCT(光干渉断層計)が用いられている。眼底は,複数の層で構成されており,RGB 3色のレーザーを用いることで各層を観察することができ,高精細な検査が可能となる(図4)。このように緑色半導体レーザーは,プロジェクション,医療,バイオサイエンス等での応用が広く展開されていると考えられる。要求される性能は,プロジェクション用途では,高出力および高効率であり,医療およびバイオサイエンスに関しては,高いビーム品質が重要となる。しかし,EELDsには,縦および横の多モード発振,放射ビームの広い発散,リッジの小さな断面積に起因する光学的損傷(COD)などの問題がある。今回紹介する緑色フォトニック結晶面発光レーザー(PCSELPhotonicCrystal Surface Emitting Laser)は,2次元フォトニック結晶による回折の効果により,単一波長,単一横モード,狭い放射角および高出力を同時に達成可能であり,多くの分野への貢献が期待される。

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