慶應義塾大学の研究グループは,テラヘルツ偏光計測法による黒色ゴム材料の定量的なひずみイメージングに成功した(ニュースリリース)。
黒色ゴム材料は,タイヤや防振ゴムなど,身近の様々な箇所で利用されている。研究グループは,これまでにテラヘルツ偏光計測を用いた黒色ゴムの新しいひずみ計測手法の提案を行なってきた。しかし,この研究は原理検証と手法提案にとどまっていた。提案した手法の有効性の検証とあわせてひずみの空間分布を視覚的に捉えるためには,光計測情報を力学的なひずみ情報に定量的に変換するアルゴリズムの開発が必要だった。
研究では,黒色ゴム試料の各点を透過したテラヘルツ光の偏光計測結果を,力学的なひずみ情報に変換するアルゴリズムの開発に成功し,定量的なひずみ量イメージ計測を実現した。さらに,従来技術であるデジタル画像相関法によって計測された『ゴム表面』のひずみ量イメージ結果と,今回の方法で得られる『ゴム内部』のひずみ量イメージ計測結果を比較した。
ひずみ量を比較した結果,試料の中央では両者の値が一致する一方,ゴムを挟んだクランプに近い両端の部分(x=±20mm 付近)では内部のひずみ量のほうが小さくなる結果となった。これは,ゴムの表面と内部とではひずみのかかり方が違うことを捉えていると解釈される。このように,従来技術であるゴム表面の画像情報では捉えられなかったゴム内部のひずみが,テラヘルツ偏光計測で定量的に可視化できた。
研究グループは今後,産業界からの要望が多い反射型計測装置を開発し,金属部品上のゴム材料など,透過測定では計測できないサンプルに対してのひずみ計測を試みるとしている。