茨城大,高屈折率無反射機能を有するテラヘルツメタマテリルを開発

茨城大学の研究グループは,高屈折率無反射構造を有するテラヘルツ波帯のメタマテリアルの開発に成功した(ニュースリリース)。

2020年に開催される東京オリンピックに向け,テラヘルツ波の応用研究が積極的に推進されており,特にX線に代わる安全かつ高精度な可視化技術としてテラヘルツイメージングに注目が集まっている。

今回,実効屈折率neff=6.7+j0.12,反射電力1.2%(透過電力91.8%・損失電力7.0%:0.31THzでの値)を有する「高屈折率」「無反射」「低損失」材質の開発に成功した。低損失かつフレキシブルなフィルムの裏表に金属の微細なワイヤー構造を描いた,非常にシンプルな構造により実現している。

テラヘルツ波帯での高屈折率材料の屈折率としてはポリエチレンの2.3やシリコンの3.4などが挙げられるが,今回開発した材質はこれらのおよそ2~3倍となる6.7という極めて高い屈折率を実現している。通常の自然界由来の材料ではこのような高い屈折率は実現できず,仮に実現したとしても54.8%もの反射が起きてしまう。

また,屈折率の実部と虚部の比で表せる性能指数においても,最高で314(0.29THzでの値)を確認した。これまでに性能指数が高い「高屈折率」「低損失」なテラヘルツメタマテリアルは報告されていたが,反射電力が大きく,多くの電磁波を損失していた。

今回さらに産業応用化に向け,厚さが波長の1/20の50マイクロメートルと極めて薄くフレキシブルである特長を活かし,極めて薄いレンズへの応用の可能性も明らかにした。

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