商品の産地などを示す地理的表示(GI:Geographical Indication)を保護する制度があります。商品の品質や評価などがその産地に由来する場合,商品に産地を特定する地名の表示を登録することによって知的財産として保護する制度です。一方で,商品の地名表示に関わるトラブルも起きています。今回はそんな話題です。
世界知的所有権機関(WIPO)では,1958年に締結された条約(リスボン協定)の中で地理的表示が明記されました。更に世界貿易機構(WTO)が1994年に作成した『知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)』でも地理的表示を定めています。又,そのような権利が容易に判別できるようなGIマークが各国・地域で定められています(図1/日本の酒類は別適用)。
地理的表示の例としては,海外ではシャンパン,パルマハム,モデナのバルサミコ酢などがその地域特有の高品質な商品として知られています。例えば,シャンパン(Champagne)はフランスのシャンパーニュ地方のスパークリングワインで,地名表示がブランドとして守られている代表的な商品です。修道士ドン・ペリニオン(1638−1715)が18世紀初頭に確立したとされる瓶内二次発酵と様々な原酒のブレンドや特殊な添加によって作られています。因みに他の地域で生産されるものは単にスパークリングワインと呼ばれます。又,パルマハム(Prosciutto di Parma)はイタリアのパルマ地方で作られる生ハムの一種です。イタリアでは古代ローマ時代から生ハムが食され,パルマの地では美味なる肉とされる熟成されたハムが生産されていました。この地域特有の気候,環境がもたらした味と称され,日本のGI制度で海外商品として最初に登録されています。更にモデナのバルサミコ酢(Aceto Balsamico di Modena)はイタリアのモデナ地方のブドウの品種から作られる酢で,その起源は古代ローマ帝国時代になるようです。添加されるものは一切なくブドウの搾り汁を煮詰める独特の技法で,熟成室で毎年樽を移し替えながら12年以上熟成させているのです。
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