国内には大小合わせて400万を超える企業があります。起業時に登記する社名は,同一住所に同一の商号(社名)がなければ登記可能です。しかし,事業領域や規模が大きくなるなどで類似の名称に関わる問題が起こり得ます。更に,商号とは異なる商標までを含むと微妙な係争にもなり兼ねません。今回は,発明や特許とは違った社名に関する話題です。良く見掛ける社名の一部が同じ場合だったり似ている商標だったりで,系列かと思っていたら全く違った…なんてこともあります。先ずは,そんな話題の幾つかを…。
《三菱鉛筆》 三菱鉛筆㈱は1887(M. 20)年に眞崎仁六(1848−1925)が東京で創業した眞崎鉛筆製造所に始まります。1878(M. 11)年にパリ万博で目にした鉛筆に感動して,鉛筆製造を模索するのです。苦労の末に完成した鉛筆は逓信省(現総務省)の御用達品に指定されるなどで実績を積みます。そうなると商標も必要になり,家紋の三つ鱗をデザイン化した3つの菱形マークと「三菱」の商標を考案し,1903(M. 36)年に登録しています。一方1914(T. 3)年に,それとは別に三菱財閥が同じ模様の「スリーダイヤ」で商標申請するのです。結果的に調停を経て事業競合がないとの了解を基に現在に至ります。因みに,財閥側から“傘下に入らないか?”との声が掛った時に,鉛筆側は断っていたようです。
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