5.6.3 円弧照明光学系
投影光学系が6枚で構成されているように,EUVでは照明系も少ない枚数で構成することが求められる。一方,本連載第26回5.4.2項の表11に示したように,照明系は多岐な要求を実現することを求められるユニットであった。
EUVの照明系の入り口はIF点で,出口はレチクル面である。IFはEUV光源の楕円鏡の形状をしたコレクタミラーの第2焦点で光はガウス分布,角度分(前回の図79参照)に伴い抜けている中心部を除けばガウス分布に近い。波長は大きく異なるがLEDのような光源である。
出口に当たるレチクル上の光量分布は投影光学系の収差補正領域に対応する細長い円弧である。幅はスリットの光量分布の傾斜部を含め9 mm(ウェハ上2.25 mm),弧の長さが104 mm(ウェハ上で26 mm)で光量分布を矩形に変換すれば1:17くらいの比を持っている。レチクル面での照度分布は±1%以下の均一性が求められ,しかもパターンに応じて照明角度分布を通常照明,輪帯照明,4重極,2重極あるいはカスタム照明等,任意に変更可能でなければならない。2つの全く異なる光学的性質を持つIF位置とレチクル位置を如何に少ない枚数のミラーでつなぐかというのがEUV照明系の課題である。
表14にEUV照明系の課題をまとめた。NA0.33のEUV照明系は図79に示したように4枚のミラーで構成されている。IFとレチクル間に挿入したFFM(Field Facet Mirror)とPFM(Pupil Facet Mirror)という2つのMEMSミラーが設計の要である。表14では白いセルが設計条件,灰色のセルが解決策を示す。表を具体的な説明図にしたのが図88である1)。
レチクル上に所望の円弧形状を作るため,入射光を円弧領域に分割するのがFFMである。FFMにはレチクル上に形成する円弧と相似形な円弧ミラーを多数個配置する。それらをレチクル位置で重ねれば平均化効果により一様な分布を持つ円弧スリットが形成できる。蠅の目レンズを用いたオプティカルインテグレータの原理の応用で,入射面はレチクル面に投影されるのであった。個々の円弧は凹面鏡になっており,PFMを構成する個々の小ミラーの上にIFの像を結像する。FFMの円弧ミラーは傾きを変更することにより,IF像を結像させるPFM小ミラーの選択を変えることができる。
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